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「持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト (伊藤レポート) 最終報告書 平成 26 年 8 月 -…
「持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト (伊藤レポート) 最終報告書 平成 26 年 8 月
基本的な問題意識とメッセージ
1 問題意識と仮説
①パラドックス-世界で最もイノベー
ティブな国の「持続的低収益性」
②「ダブルスタンダード」経営の限界と「日本型短期主義」経営への懸念
③長期投資家不在の「資産運用後進国」日本
④企業と投資家の対話の欠如がもたらす悪循環
⑤資本効率と企業価値の向上が日本の国富を維持・形成するための鍵
2 基本メッセージ
①持続的成長の障害となる慣習やレガシーとの決別を
②イノベーション創出と高収益性を同時実現するモデル国家を
③企業と投資家の「協創」による持続的価値創造を
④資本コストを上回る ROE を、そして資本効率革命を
⑤企業と投資家による「高質の対話」を追求する「対話先進国」へ
⑥全体最適に立ったインベストメント・チェーン変革を
要旨
Ⅰ.持続的成長への経営改革に向けて
1.問題意識と仮説
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①日本企業の「持続的低収益性」がもたらす短期主義経営への懸念
2.議論と現状・エビデンス (本文の該当論点)
1)日本企業のROEの長期低迷の主因は、レバレッジでなく事業収益力の低さ(論点3.1)
ROE
売上高利益率 :red_cross:
資本回転率
レバレッジ :
2)厳しい中でも収益を維持する企業に4つの共通項 (論点2.1)
(1)
他社との差別化で顧客に価値を提供して価格決定力を持っている
(2)自社の存在が不可
欠となるポジショニングと事業ポートフォリオ最適化を徹底している
(3)オープンイノ
ベーション等他社との連携も視野に入れた継続的なイノベーションを行っている
(4)変化を恐れず、時代や自社に合った経営革新に合理的、積極的に取り組んでいる
3)日本企業のインセンティブ構造が経営の時間軸と資本効率に影響 (論点4.2)
ダブルスタンダード経営
4)「資本コスト」と ROE をめぐる認識のミスマッチ (論点 3.2)
3.提言・推奨 :
1)企業と株主の「協創」による持続的価値創造 (論点1.1)
「協創(協調)
2)資本効率を意識した企業価値経営への転換
①中長期的なROE向上を経営の中核目標に (論点3.1)
サステイ
ナブル成長率
企業価値経営
②目指すべきROE水準と資本コストへの認識を高める (論点3.3)
資本コスト
③企業価値向上の観点から資本政策を語る (論点3.4)
④CFO人材を強化・育成する (論点4.2)
精度の高いリスク・マネジメント
「経営者としての財務最高責任者(CFO)」
⑤ROE等を現場に落とし込む (論点3.2)
⑥収益力と資本効率向上を日本経済の好循環につなげる (論点3.1、4.2)
Ⅱ.インベストメント・チェーンの全体最適に向けて
1.問題意識と仮説
企業価値向上を支える長期投資家の層の薄さ
2.議論と現状・エビデンス
①持続的低収益が助長する日本市場特有の短期志向と層の薄さ (論点6.1、7.1、8.1、9.1)
第一に、日本における短期志向の理由としては、長期にわたって株価上昇期待が薄い状態が続いた中、短期の投資機会を追求することが経済合理性に合致していた面が強い。長期投資を促すには、長期的に企業の収益性が高まり、株価上昇への期待が高まることが重要である。
第二に、日本の投資コミュニティ(アセット・マネージャー、アセット・オーナー、セルサイド・アナリスト)において短期志向化を促すインセンティブが働いている。特に国内の機関投資家やセルサイド・アナリストが、企業価値を適切に評価して長期投資を促進するための課題も多い。
② 国内のアセット・マネージャーは、金融機関系列が中心であり、ローテーション人事による長期経営や専門性確保のしにくさ、長期業績との連動が薄い報酬体系等が指摘されている。また、アセット・オーナーによる短期的な評価が、運用機関の評価に影響を与えている面もある。
① 主要なアセット・オーナーとしての年金基金には、運用面での人員の少なさや専門性
の低さ等の課題が提起されている。また、本来長期視点で投資収益性を見るべき年金基金が、月次や四半期等の短期実績でアセット・マネージャーを評価する傾向が見られる。
③ セルサイド・アナリストが所属する証券会社には、長期的投資家よりも手数料が多く得られる売買回転率の高い短期志向の投資家にサービスを増やすインセンティブが存在している。また、セルサイド・アナリストに対しては、四半期開示等に過度に反応した短期志向化、中長期的なファンダメンタルズ分析や企業との本質的な対話不足が指摘されている。
第三に、企業側から中長期的な価値創造を理解するための情報が効果的に開示されていないことがある。そのような情報がない場合、短期的な情報に目を向けざるを得ない。
第四に、短期志向化を助長し得る制度的な仕組みがある。たとえば、高速売買インフラや四半期開示が、セルサイド・アナリスト等の短期志向を助長するという「意図せざる結果」を招いている可能性がある。
3.提言・推奨
1)インベストメント・チェーンを最適化するインセンティブ構造へ (論点8.1、9.1)
2)パッシブ運用から深い分析に基づく銘柄選択を (論点8.1、9.1)
3)長期的な応援株主としての個人投資家の育成 (論点5.1~5.3)
Ⅲ.企業と投資家の対話を通じた企業価値向上に向けて
1.問題意識と仮説
①企業と投資家の対話の欠如がもたらす悪循環
2.議論と現状・エビデンス
1)企業価値をめぐる基本的な考え方の違い (論点1.2、12.1)
2)中長期的な企業価値を判断するための開示の不足 (論点11.1、11.2)
3)中長期的な企業価値向上に資する対話の不足 (論点12.1)
3.提言・推奨
1)「対話先進国」に向けた共通理解とプラットフォームの創設 (論点12.4)
2)持続的な企業価値につながる企業開示へ (論点11.1、11.2)
3)「緊張と協調」による企業と投資家の真の対話促進 (論点12.1)
①「緊張と協調」の両側面
②適切な目的と内容を持った対話・エンゲージメントへ
③企業に求められる対話への理解と心構え
④機関投資家に求められる対話への姿勢と実力
⑤経営者・取締役の深い理解と関与を求める場の設定
⑥対話促進の観点からのコーポレート・ガバナンス・コード検討
⑦対話の場としての株主総会プロセスの見直し
プロジェクト参加者一覧
座長 伊藤 邦雄 一橋大学大学院商学研究科 教授 :checkered_flag:
参加者
北川 哲雄 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科 教授
新井 亮一 青山学院大学 講師
林 順一 青山学院大学学術フロンティアセンター 研究員
根井 伸一朗 旭化成株式会社 上席執行役員 経営戦略担当補佐(海外
拠点担当)
桝田 恭正 アステラス製薬株式会社 上席執行役員 財務担当(CFO)
安井 肇 あらた基礎研究所 所長
スコット・キャロン いちごアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
吉田 憲一郎 いちごアセットマネジメント株式会社 シニアアドバイザー
柳 良平 エーザイ株式会社 執行役 Deputy CFO &Chief IR Officer 兼早稲田大学大学院講師 :red_flag:
神崎 義明 大塚製薬株式会社 常務執行役員 医薬品事業部長補佐
安藤 聡 オムロン株式会社 執行役員 経営 IR 室長
小口 俊朗 ガバナンス・フォー・オーナーズ・ジャパン株式会社 代表取締役
山本 卓 企業年金連合会 年金運用部 株式担当部長
渋澤 健 コモンズ投信株式会社 会長 :red_flag:
澤上 篤人 さわかみ投信株式会社 取締役会長 :red_flag:
大堀 龍介 JP モルガンアセットマネジメント株式会社 CIO
山崎 直実 一般社団法人 株主と会社と社会の和 代表理事
前田 伊世雄 株式会社資生堂 IR 部 株式グループリーダー
長谷川 顕史 新日鐵住金株式会社 法務部法務企画室長
野崎 邦夫 住友化学株式会社 常務執行役員
小林 強 株式会社セブン&アイ・ホールディングス 取締役執行役員 経営企画部 シニアオフィサー
橋谷 義典 ソニー株式会社 VP 秘書部担当 兼 総務部 統括部長
近藤 成径 第一三共株式会社 コーポレートコミュニケーション部
IR グループ長
菊池 勝也 大和証券投資信託委託株式会社 調査部 チーフアナリスト
山本 高稔 東京エレクトロン株式会社 監査役、
富士重工業株式会社 監査役
大場 昭義 東京海上アセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
大庭 雅志 東京海上ホールディングス株式会社 専務取締役 CFO
宮崎 敏 TOTO 株式会社 上席執行役員 経営企画本部長
佐々木 卓夫 トヨタ自動車株式会社 常務役員
内田 章 東レ株式会社 常務取締役 IR 室・広報室・宣伝室統括、
貝沼 直之 株式会社 ドンキホーテホールディングス
コーポレートコミュニケーション本部 IR 部 部長
田川 丈二 日産自動車株式会社 執行役員 IR 部 M&A 支援部
武内 徹 日東電工株式会社 取締役 執行役員
辻本 臣哉 ニ ッ ポ ン ラ イ フ ・ グ ロ ー バ ル ・ イ ン ベ ス タ ー ズ ・シンガポール CEO
川島 勇 日本電気株式会社 取締役 執行役員 CFO
上田 亮子 株式会社日本投資環境研究所 主任研究員
鈴木 行生 株式会社日本ベル投資研究所 代表取締役 主席アナリスト
井潟 正彦 株式会社野村資本市場研究所 執行役員
大崎 貞和 株式会社野村総合研究所 主席研究員
関 篤史 バークレイズ証券株式会社 ヴァイス プレジデント
加賀谷 哲之 一橋大学大学院商学研究科 准教授
円谷 昭一 一橋大学大学院商学研究科 准教授、日本 IR 協議会 客員研究員
野間 幹晴 一橋大学大学院国際企業戦略研究科 准教授
三瓶 裕喜 フィデリティ投信株式会社
ディレクター オブ リサーチ :red_flag:
江良 明嗣 ブラックロック・ジャパン株式会社 運用部門 ヘッド・オブ・コーポレートガバナンス ヴァイスプレジデント
内野 州馬 三菱商事株式会社 常務執行役員 CFO
戸矢 博明 リム・グローバル・アドバイザーズ・リミテッド
ジェネラル・マネージャー
オブザーバー
油布 志行 金融庁 企業開示課 課長
安井 良太 株式会社東京証券取引所 上場部 部長
佐藤 淑子 一般社団法人日本 IR 協議会 事務局長
事務局
福本 拓也 経済産業省 企業会計室 室長
廣澤 孝夫 一般財団法人企業活力研究所 理事長
本文
1 持続的成長と企業価値創造 .
1.1 【論点】
「持続的成長」とは何か。それは、企業と投資家との関係でどのように捉えられるべきか。
【議論と現状・エビデンス】
01 持続的成長とは、中長期的、継続的に企業価値が高まっていくことである。
02 持続的成長のイメージとして、短期的な変動はあるが、企業のファンダメンタルズあるいは中長期的な経済価値が向上していく姿が示された。
03 投資家が考える長期投資ができる企業とは、持続的な競争優位により、長期的・持続的に資本コストを上回る利益が創出できると見込まれる企業である。
【提言・推奨】
04 持続的成長とは、中長期的に企業価値を高めることである。それは、中長期的に資本コストを上回るパフォーマンスをあげることによって実現され、投資家はそうした価値創造に期待して長期投資を行うことができる。
05 投資先の持続的成長を期待する投資家は、ボトムラインとしての「当社株主に帰属する当期純利益」のすべてまたは一部を内部留保として企業内に蓄積し、それを再投資し、(持続的)成長原資として役立てることを期待している。これは株主が持続的成長を期待し、それに協力していることを意味する。つまり、持続的成長は企業と株主との協創(協調)の成果と捉えるべきであり、株主が成長の後押しをする存在であることを経営者や事業責任者が認識することが必要である。もし内部留保を成長原資として活用できないのであれば、内部留保の活用の仕方を再検討(たとえば配当ないし自社株取得も含め)すべきである。
1.2 【論点】 「企業価値」とは何か。「企業価値」には異なる捉え方があり、とりわけ「企業価値」をめ ぐって企業側と投資家側の考え方にかなり隔たりがあるのではないか。
【議論と現状・エビデンス】
2 持続的成長のすがた
3 ROE と資本コスト、資本規律
4 マネジメントシステムと経営者のインセンティブ
5 中長期投資の促進
6 アセット・マネージャーのインセンティブ構造
7 アセット・オーナーの体制等
8 セルサイド・アナリストの役割とインセンティブ構造
9 投資家の短期志向(ショートターミズム)化
10 経営の短期志向化
11 持続的成長に向けた企業開示のあり方
12 対話・エンゲージメント.
参考資料
1 開催実績と議題
2 エビデンス・情報・意見の提供者