Please enable JavaScript.
Coggle requires JavaScript to display documents.
【読書】めーきゃっぷ今昔
ーー江戸から昭和の化粧文化ーー
https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/29/inde…
江戸時代の化粧
経済の発展に伴い豪商が台頭する元禄期(1688-1704年)には、商品の流通網が整い、化粧品が京都や大坂に住む庶民の手に届くようになったと考えられています。
文化・文政期(1804-1830年)には、江戸の女性の間で化粧は身近な習慣となっていました。
-
おしゃれのための化粧
-
スキンケア
当時すでに、きめ細かでつややかな素肌を目指すスキンケアの意識がありました。洗顔の習慣も普及しており、洗顔料としては一般的にぬかが用いられました。下図は、女性がぬか袋で首を洗っている様子です。家庭で化粧水を手作りすることも多く、身近な植物を用いた「へちま水」や「きゅうり水」などが作られていたようです。
美白と白粉
このように、江戸時代の美人の第一条件は色白であることでした。
白い肌をつくるためには白粉が用いられました。白粉の濃淡は時代や地域、身分や職業により様々でしたが、一般に、庶民の女性は素顔か薄化粧のことが多く、格式や伝統を重んじる武家に奉公する御殿女中などは厚化粧であったようです。白粉化粧の方法は、『都風俗化粧傳』によると、次のような手の込んだものでした。
まず、水で溶いた白粉を、額から両頬、鼻、口のまわり、耳、首筋の順に、手と刷毛で肌に伸ばします。次に、むらなく光沢を出すため、顔に紙をあて、上からぬらした刷毛ではいて白粉を肌に落ちつかせます。紙をとり、乾いた刷毛で粉白粉をむらなく伸ばします。最後に、湿らせた手ぬぐいで目の上、目じりの余分な白粉をおさえ、厚化粧に見えないようにし、鼻には白粉を少し濃く塗って、鼻筋が通って見えるようにします。
華やかな紅化粧
紅も重要な化粧品でした。紅化粧の流行は、唇や頬などに薄く塗ったり、まったく塗らなかったり、濃く塗ったりと様々でした。一風変わった化粧としては、文化・文政期に下唇を緑色にする化粧(笹色紅)が流行しました。紅の何度も塗り重ねると玉虫色に光るという性質を利用した化粧です。以下の動画では、紅を塗り重ねたときの様子を見ることができます。
当時、紅は「紅一匁、金一匁」といわれるほどの高級品であったため、笹色紅はぜいたくなおしゃれができることを示すための見栄から生まれた化粧といわれています。
『都風俗化粧傳』には、少量の紅で唇を緑色に光らせる節約法として、下地に墨や行灯の油煙を塗り、その上から紅を重ねるという方法が紹介されています。庶民はこうした工夫をして流行の化粧をしていたのかもしれません。
-
-
広告あれこれ ―明治、大正、昭和の化粧品広告―
1890年代
このころ、広告はまだ白黒印刷であり、広告文は文語体、モデルは和服姿でした。当時の人々は美白を追求していたのでしょうか。「肉體色白新劑」の広告文には、商品を使用すれば、男女共に肌が白く美しくなり、きめも細やかになると書かれています。
-
-
-
-
-
1950年代
戦前は、白粉を中心としたベースメイクの広告が多く見られましたが、戦後は、口紅をはじめとするポイントメイクの広告が増加しました。流行色を打ち出した広告や海外製を強調するキャッチコピーが特徴的です。また、「マダムジュジュ」のような年齢化粧品も現れました。
-
参考文献
石田あゆう『図説戦時下の化粧品広告:1931-1943』, 創元社, 2016【DH435-L144】
-
大郷保治「色材からみた化粧品の歴史」『色材協会誌』56(11), 1983.11【Z17-211】
大野粛英『歯(ものと人間の文化史;177)』, 法政大学出版局, 2016【SC674-L336】
『今和次郎集 第8巻 (服装研究)』, ドメス出版, 1972【GD1-17】
佐山半七丸著, 速水春暁斎画図, 高橋雅夫校注『都風俗化粧伝』東洋文庫414, 平凡社, 1982【GD68-18】
篠田達明『徳川将軍家十五代のカルテ』新潮新書, 新潮社, 2005【GK13-H565】
『週刊サンケイ』11(8), 扶桑社, 1962.2【Z24-17】
鈴木則子「江戸時代の化粧と美容意識」『女性史学』, 2003, pp.1-17【Z8-B171】
髙橋雅夫『化粧ものがたり:赤・白・黒の世界』第2版, 雄山閣, 2018【GD68-L18】
玉木広治編『欧米最新美容法』, 東京美容院, 明治41【31-463】
富澤洋子「無鉛白粉誕生――御料御園白粉」『Maquiller : 化粧文化研究ノート』32, 2012.9【Z6-3325】
日本化粧品工業連合会編『化粧品工業120年の歩み』, 日本化粧品工業連合会, 1995【DL535-G3】
-
ポーラ文化研究所編著『おしゃれ文化史:飛鳥時代から江戸時代まで』, 秀明大学出版会, 2019.6【GD64-M7】
ポーラ文化研究所編『明治・大正・昭和の化粧文化 : 時代背景と化粧・美容の変遷』, ポーラ文化研究所, 2016.7【GD68-L12】
前田和男『男はなぜ化粧をしたがるのか』, 集英社, 2009【GD68-J15】
山村博美『化粧の日本史:美意識の移り変わり』, 吉川弘文館, 2016【GD68-L9】
山本桂子『お化粧しないは不良のはじまり』, 講談社, 2006.2【GD68-H29】
渡辺信一郎『江戸の化粧:川柳で知る女の文化』, 平凡社, 2002【GD68-G43】