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エンジニアリング 組織論への招待 (思考のリファクタリング (1.1 すべてのバグは,思考の中にある (集団でのソフトウェア開発では自分以外の他人と…
エンジニアリング 組織論への招待
思考のリファクタリング
1.1 すべてのバグは,思考の中にある
集団でのソフトウェア開発では自分以外の他人との関わりを踏まえてどのように振る舞うかを求められることになる
開発の現場では多くの理不尽や感情の対立が発生している.これは人間の思考の中にバグが含まれているような状態
思考のリファクタリングをすることで
頭の中で発生する無駄なプロセスを削除して,考えるときの指針を持つことで,問題解決に向かって明確に行動できるように促す
1.2 不確実性とエンジニアリング
「曖昧さ」を減らし,「具体性・明確さ」を増やす行為が「エンジニアリング」
誰かの曖昧な要求からスタートし,それが具体的で明確ななにかに変わっていく過程が実現で,その過程すべてがエンジニアリング
組織構造と不確実性の流れ
ピラミッド構造をした組織の例
上位に行くほど抽象的で曖昧な指示をしてく必要が出てくる
企業という組織は組織全体を通じて,不確実なものを確実なものに変化させ何かを実現する処理装置とみなせる
マイクロマネジメント型の組織
不確実性の削減が少ししかできない ,具体的で細かい指示をしないと動けない組織
指示をする側の知的能力がそのまま組織の知的な能力になる
指示をする側に問題が発生すると途端に組織のアウトプットが低下する
人員を増やしても,指示をする側のキャパシティに限界があるのでスケールしない
自己組織化された組織
不確実性の削減をより多く行うことのできる,「抽象的で自由度のある指示」でも動ける組織
組織が拡大に応じてパワーを発揮できるスケールする組織
不確実性の発生源
未来(環境不確実性)
それがやってくるまでどうなるのかわからない
頭でいくら考えてもわからないので,実際に行動し,実験して観察することで不確かさを減らしていく
他人(通信不確実性)
個々人が別の意識を持っていて,すべての情報を一致させることは不可能
正しく伝わるとは限らない
正しく伝わっても,他人が思ったように行動するとは限らない
いくら考えてもわからないので,コミュニケーションを通じて不確実性を減らすしかない
不確実なものに向き合うのは「不安」が伴う
「わからない」ということは自分を脅かす可能性があるということ
不確実性を減らさない限り不安も減っていかない
but
不確実性に向き合うことそれ自体が最大の不安を生み出してしまう
1.3 情報を生み出す考え方
エンジニアリングとは不確実性を減らすことであり,つまりは情報を生み出すことにほかならない
市場に溢れた不確実性,要求仕様の不確実性,実現手段の不確実性に向き合う必要がある
問題がはっきりと与えられる問題は少ない,
しっかりと考えたら答えが出るのではないかと熱心に取り組むもののうまくいかない -> 自分自身が勉強不足だとか,その答えが出ない原因を探して悩んだり苦しんだりしてしまう
論理的思考の盲点を知る
どんなときに自分は論理的でなくなる可能性があり,人が論理的でなくなる可能性があるのかを知った上で問題解決に臨む
仕事は通常複数人で行う
問題解決を行うための論理的な思考力はコミュニケーションの失敗によって制限される
意識的,無意識的な感情を乗り越えて,問題を正しく認知する必要がある
経験主義と仮説思考
経験主義
問題を解くために必要な情報が無いのであれば,情報を入手するために行動を起こし,結果を観察することで問題を明確にする
仮説思考
限定された情報から全体像を想定し,それを確かめることで少ない情報から問題解決に向かう思考法
この2つを用いて行動を続けることで答えに近づく
システム思考
仕事において正解は一つではない
時間と資源の制約の中でより正解に近づく一手を打ち続けることが必要
何が正解なのか,
全体像を見極めて
自ら設定することが必要
「論理的思考の盲点」「経験主義・仮説思考」・「システム思考」を用いて, 複雑な問題を簡単な問題に変換していくことが重要
「問題が解けない」のであれば問題が正しく明晰に記述できていない」と考えると何をすべきかが見えてくるはず
1.4 論理的思考の盲点
要約
論理的思考の前提を崩してはいけない
前提
正しく演繹できること
ルールと事象を正しく認知できること
対策
事実を正しく認識できる
できる限り,正しく事実を認知するためには,自分の認知がいつ,どのように歪むのか知る必要がある
認知の歪みパターン
ベーコンの4つのイドラ
4 more items...
認知の歪み
7 more items...
認知的不協和
2 more items...
自分のアイデンティティの範囲を知る
自分自身を構成すると思っていることをアイデンティティという
自分自身のアイデンティティだと思っている範囲を攻撃されると怒りを感じる
アイデンティティの範囲は人それぞれで,個人,チームメンバー,仕事の進め方,宗教,社会,国家など様々
怒りやすい人はアイデンティティが広い人かもしれない,逆も同様
他人が何を大事にしてるかは分からないので怒りを感じたもしくは,怒りを感じさせてしまったときにはしっかりコミュニケーションを取る
怒りを感じたときには「何がどのように傷つけられたのか」を深く捉えることが重要,思いがけない自分自身を知ることにつながる
どんな人間であれ,ありのままの事実を完全に正しく認知することはできない. 実際に起きていることと,それを人が感じた認知では大きな隔たりがある
感情にとらわれず判断できる
論理的思考というよりも,感情による短絡によって前提から結論へとすばやく思考を進めてしまうことがある
過去の経験から,目の前の事実を正しく認識できず,事実を明らかにする前に感情によって短絡的に結論に結びつけてしまう
感情的になる瞬間を知り,その影響を少なくできる能力が必要
1.5 経験主義と仮説思考
仮説思考
「わずかな痕跡」からそれを説明可能とする大胆な思考展開・モデル化を行い,それを検証するための行動につなげる推論方法
「少数の痕跡」から,「確かめる行動につながる」ことが重要
仮説のズレた使われ方:演繹・帰納法のような推論で物事を捉えてしまい,次の行動につながらない
「十分な証拠がないから仮説を作れない」
「今までの前提から導けないからこの仮説は間違っている」
仮説思考は,経験主義をさらに生産的な(不確実性を削減する)ものにするために「大胆な跳躍」をもたらす
仮説は,今あるデータから演繹的・帰納的には導くことのできないもの.人間的な直感やひらめきによって,今までの情報や様々な偶然が積み重なって生まれる跳躍 ???
PDCA サイクル
仮説検証のサイクルであり,「何が仮説なのか」を明らかにして「どのようにすれば検証できるのか」というアイデアを持つことが重要
仮説が定まらないまま行動し,何の仮説も検証されず改善もできない悪循環に陥らないように注意
データ駆動な意思決定
以下の2点について有効
「仮説」を推論するために,もっているデータを可視化する
「仮説」が正しかったのかを統計的に検証する
常にデータは不完全でそこから意思決定は導けない
経験主義
不確実なものを確実にするためには行動して確かめる必要がある
すべての情報が揃っていないので,より問題をはっきりさせるためにはどのような「次の一手」を打てばよいのか考える
わからなかった あるいは正解ではなかったことが重大なヒントとなり,次の行動を生み出す
わからないを行動に変換し,一歩でも正解に近づく
不確実なものから優先的に取り組む
不確実性の高いものから優先的に取り組み効率的に不確実性を下げることで,時間の読みは正確になり,不安も減る
実際には不確実なものから優先的に取り組むのは難易度が高い.不確実なものに直面することはとても「不安」なことだから
プロフェッショナルは不確実なものから取り組む
仕事の最初期に不確実なものを確実にしていくと,全体像が早い段階で見えてくる
依頼した人と意思統一ができていなかった場合のリカバリーをする時間も確保できる
短い時間で一定のクオリティまで上げて,残りの時間でクオリティを作り込んでいく
「行動できることは何か」と「行動の結果起きたことを観察できるか」という2点が重要
コントロールできるもの / できないもの
何がコントロールでき,できないのか見極めるために書き出す
問題を感じたり,不安を感じたりしたときに,知らず知らずのうちに「コントロールできないもの」をコントロールしようとして,更に思考が混乱する,ストレスを感じてしまう
自分達が操作できるのは自分の行動や考え方だけ
観測できるもの / 観測できないもの
コントロールできないものを自身の行動で変化させようと試みるときには「観測できる」必要がある
「観測できないもの」はどんな行動をしても変わったのか,変わらなかったのか分からない
「コントロールできるもの」を操作し,「観測できるもの」の結果をみみることでしか,前には進むことができない
遅延された意思決定
小さな検証を重ねて,不確実性を減らしてから
大きな投資(意思決定)をする
プロジェクトが生み出す利益の変動幅(ボラティリティ)が分かれば(ある程度推測),これを元にどの程度の費用までは仮説検証に使うことができるのか計算できる
期待値で割に合わないから と考える前に,最小限の仮説検証オプションを忘れていないか注意
1.6 全体論とシステム思考
対立に見える問題から,対立にならない全体像をあぶり出す
問題の解決を個人の問題にせず,関係性の問題に変換して本当の問題を発見することが必要
要素還元主義では要素の総和としての全体の性質は分からない
例えばロジックツリーの分解では各要素を独立と考えるが,実際には関係し合っていて,どこか一つのみを増減させることはできない
全体の関係性が見えれば対立は解消する
顧客満足度・ユーザー数・単月の売上という比較できないものであっても,もう一階層上から,ビジネス全体のシステムを捉えることで比較可能なものに変化する
目的の次元を揃える,(例えば最終的に各指標が利益にどう反映されるかを考えた上で同じ次元で比較する)
認知範囲はとシステム思考
視野
あるポイントからその問題を眺めたときに把握できる領域の広さ
「良い」プログラマは,自分が置かれている前提を正しく把握した設計を生み出すことで良いプログラムを作り出す
視座
どこから眺めるか,問題を適切な次元で捉えられているか??
視点
どの角度から見るか.捉え方によっては問題はシンプルにも複雑にもなりうる
問題の原因は個人だけではなく,個人同士の関係性にもある
個人の性質よりも,個々人の関係性の方が変えやすい
視野・視点・視座を広く・鋭く・高く考え,関係性もしっかり考慮する
完全な全体像は捉えられないことを念頭に置く
1.7 人間の不完全さを受け入れる
1章で紹介した認知の歪みをパターンとして認識することで,自分自身の過ちに気が付きやすくする,そして少しずつ改善していくことが重要
不確実性
他人
未来
未来 = 環境不確実性 -> 経験主義・仮説思考
他人=通信不確実性 -> コミュニケーション
他者理解の不確実性
伝達の不確実性
成果の不確実性
情報の非対称性
知っている人,知らない人の分断
自分の抱えている状態を他人も把握しているはずだと勘違い
あるいは把握していてほしいという願望に基づいて行動してしまう
互いの情報伝達が不完全で,それゆえ引き起こされた問題に,何らかの悪意を見出してしまう傾向があるので注意する
限定合理性
自分の限られた認知の中での正解が全体にとっての正解にはならない
情報の透明性
透明とは継続したコミュニケーションや仕組みを通じ,コミュニケーションの不確実性を低く維持することで.
情報の非対称性が削減されている
限定合理性の働きが弱められている
状態
透明性の実現には以下の2つが重要
意思決定と意思決定に関わる情報が組織内に正しく整合性を持って伝達されれうように継続して努力する
何かわからい決定があったとしても,それは誰かが隠そうとしたわけではなく,抜けてしまったのか自分が聞き逃したのだから直接聞いてみようという関係性を築く
メンタリングの技術
2.1 メンタリングで相手の思考をリファクタリング
メンタリングとは対話を通じて,メンタリングする人の思考能力を一時的に貸出し,思考の幅を広げていくことで,その人の歪んだ認知を補正し,次の行動を促し,成長させていく手法
知識のある人がない人に対して,上から押し付けるような教育方法ではない
逼迫した問題を抱えている当人は,抱えている問題に揺さぶられて,冷静でいることは難しくなる
感情的になったり,事実に基づかない思考をしてしまったり,大きな不安で押し潰されてしまったりと,普段の思考力を発揮することが難しくなってしまうもの
メンタリングとエンジニアリングの関係
コードレビュー
問題に対してより良い考え方,プログラミングは存在する
その考え方に気がついて成長を促すのがコードレビュー
コードにアイデンティティを広げてしまい,指摘を人格批判に感じてしまうケースもあるので注意する
必要に応じて,直接口頭でコミュニケーションを取る
修正案をつけた提案で,相手に考えさせつつ,修正にかかる時間を適宜短くしていくことも大事
ペアプロ
2人がドライバーとナビゲーターに分かれて,ペアでプログラミングを行う
ドライバーはコードを書くこと,ナビゲータは問題解決の方針を考えることに専念でき,集中して問題解決に継続的に取り組める
相互の信頼関係,一定のプライバシーへの配慮,メンタリングのテクニックがある必要がある
障害時ハンドリング
規模が大きい障害が起きたときに,チームのメンバーをまとめて,状況整理・原因特定・ステークホルダーとの連携・復旧作業を進める必要がある
司令塔は俯瞰的な目で情報を整理し,事実と意見を分けてチームをまとめる必要がある
チームマネジメント
チーム全体を自発的なものに変える集団メンタリングが必要.
1:1から1:多 へ
自立型人材を作るために,メンタリングを通じて,信頼関係の上に,期待値を調整して,適切に自己効力感を持てるようなフィードバックループを作り出すことが必要
依存型人材
問題を与えられてから考える
問題と解決策を渡されてから動ける
傾向
物事の原因を他人に求め,善悪二元論で判断を行う
その状態にいることを無意識的には心地よく感じていて,問題に取り組むこと自体を無駄なことと考えがち
自分の仕事を限定的に捉えて,自己防衛的に振る舞う
自立型人材
自ら問題を発見し解決することができる
問題について自分ごととして捉えている
傾向
物事の原因を自分に求め,今より良い状態にするためには自分がどうしたら良いかという問いを常に抱えている
課題に対して正面から向き合うことができる
解決の為には人間関係のリスクを恐れずに勇気おw出して行動を取ることができる
自立的な思考を行うことの快感(自己効力感)が,依存的な思考を行う快感(コンフォートゾーン) を上回るようにメンティを導いていく 事が必要
人は自分のコンフォートゾーンを変えることがなかなかできない
与えられた役割の中で,自身が「心地よく」いられる思考の範囲や行動の範囲
人は与えられたと思っている役割に対して,自分の思考を閉じてしまうという修正がある
自分の部署の売上に責任感を持っていても,国の方針には無関心
学習性無気力
負のフィードバックサイクルの結果何をしても無駄なんだと学習してしまうケース
自己効力感 self-efficacy
自ら考えて動いた結果,評価された・周囲の尊敬を集めたといったポジティブな結果を手に入れて学習する,「自立的に動くことは,楽しい」という感覚
人が限定合理性に縛られてしまうのは,閉じた世界で考えることが心地よいものだから.
人が限定合理性に縛られてしまうのは,閉じた世界で考えることが心地よいものだから.
効率的なメンタリングのためには
HRT(謙虚・尊敬・信頼)
がメンターとメンティーの間には必要
謙虚:お互いに弱さを見せられる
敬意:お互いに敬意を持っている
信頼:お互いにメンティ(自身)の成長期待を持っている
成長の階段を登らせるためには
階段を認識させる
壁にはしごをかける
階段を登りたくさせる
自分で問題に気づかせるほうが積極的に解決できる
大きな階段に苦戦している最中では成長性している実感が少なく,フィードバックも途切れがちになる,大きな課題に対しては梯子をかけ,一歩一歩登っている字k何を提供する
こうなりたいと思う状態をできる限りリアルに想像して,そのために何をしていくのか考える様に誘導する
他者説得から自己説得に
他者説得
他人が答えを教える
体感を伴わない
理解を確認できない
自己説得
他人が質問で促す
体感を伴う
行動の変化が発生しやすい
すべてのその人の問題は当人しか解決できないので,解決策を言うこと自体が相手への経緯を書いた行為とも言える・・??
メンタリングでは「次に取る行動」がはっきりするように促す必要がある
メンティが「行動できていないとき」に,メンターは,「悩み」を聞き出し,気づきを促して「考える」に変えていく必要がある
次に取るべき行動がはっきりすれば考えることはあってもい「悩む」ことは少なくなる
「考える」
次に何をすれば良いか明確にしてあり,答えが出ていなくても,何かと忙しく行動をとっており手が止まることはない
「悩む」
ぐるぐると思考がめぐり続け,もやもやが取れていない状態
手が動いていない状況が続くことでメンターもメンティーも観測できる
「考える」ためのサポートをせずに,考えてというのは,単に「悩んで」苦しむことを要求しているに等しい とも言える・・
2.2 傾聴・可視化・リフレーミング
メンターはメンティーに対して「モヤモヤしていない問題に変換してあげよう」という意識を持つことが重要
「問題を解決してあげよう」ではない
「答えはまだわからない」が,「明確に次にすべき行動が分かる」ような問題に変換する
感情的に固執していて解けないので「傾聴」する
「相手」を中心としながら「相手の思考が整理され,前向きに考えられるように支援」するよう意識して会話を行う
「相手の」感情への共感を言動で表す
「相手の側に立って話を聞いている」という言外の「信号」を常に送り続ける
仕草・うなずき・座り方
スマホを触る,時計を見る,手遊びをすることはしない (聞く価値がないと思っている信号)
腕を組まない(話を信じがたいと思っている信号)
手で机をタップしない(苛立っている信号)
ポジティブな話には早く細かくうなずき,ネガティブな話にはゆっくり深くうなずくこと (共感をしている信号)
横に座って全身が見えるようにして話す
真正面だと審査しているようになり,弱みを言えずしっかりとしたことを言わないといけないと感じてしまう
表情
相手の目を見て話すことは相手によって受け取り方が異なるので注意(監視されている,自尊心が強い etc )これは他のテクニックにも言える??
相手に緊張感があるようであれば,力を抜いてリラックスした表情をし,ゆっくりと低いトーンで話をすることで緊張感を取り除く
相手の表情に呼応して,感情表現をすることで話を引き出しやすくする(ミラーリング)
あいずち
事実関係が重要な場合には「Aさんが〜したんですね」と主語と述語だけ抜き出して要約した形であいづちを打つ(話を聞いている信号)
メンティが悩んえいる時には話の前後関係が錯綜したり,同じことを繰り返してしまったりするの.伝わっていることが相手に伝わると,安心して次の話に進んでくれる
何かに対して感情的な表現を行った場合は,感情に関わる箇所のみを抜き出してリピートする ( 感情的な共感,受け入れの信号)
相手は感情を吐き出しやすくなる,
信号をしっかり送ることで伝わったと認識し,次の話にいける
気が付かない信号を指摘してもらう
「自分はあまりそういうつもりはないけど,もしそんな風に感じるところがあったら教えて」と予め伝えておくことで,自分自身の手癖や表情の癖を知る
人はなかなか自分が発信している言外の信号に気がつなかないが周囲の人は気がついている
相手に伝わる情報に対して「自分がそう思っているから」,「そんなつもりはない」という言い訳は通用しない
必要に応じてそういうシーンの動画を撮影して自分自身で見ることで自分の信号を省みる
同感ではなく「共感」をする
「相手がそのような気持ちになった理由を理解する」ことが大事
感情は完全に個人的なものであり,全く同じ様に感じたり,それ自体を否定できるものではない(その様に感じたかどうかは観測できない)
個人的な感情の源となった,事情・価値観などを理解して「なるほど,だからあなたは今そのような感情なのですね」と理解をすることが重要
感情の背景を理解することで,より深く話を聞いていくことができる
「相手の」話の内容を「可視化」する
「相手の」思考の「盲点」を探索しながら質問する
客観視できずに解けていないので「可視化」し「明晰化」する
感情が入り混じった状態にあった問題を徐々に客観的な問題へと変換する
可視化
抱えている問題をノートなどに書き出す事で,物理的に視点を変えて「問題と私たち」という構図にする
可視化によって,抱えている問題を客観的な問題として捉えることができようになっていく
明晰化
感情的に癒着した問題は,「一般化」する傾向がある
過去の行動と現在の問題が感情によって分かれ難く癒着している状態
問題となった具体的な事例に関して聞いていくことで,感情的に癒着してしまった別の事例はすでに解決済みであったり,あまり関係のないことだと気づける -> 問題のポイントが絞られていく
問題の根本は非常に個人的な問題であることが多く,メンターが直接解けるものではない.メンターができるのは問題を「簡単な問題に変換する」ことだけ
可視化・明晰化の技術
事実と意見を分ける
強い感情は「自らがおびやかされるのではないか」と感じたときに発生し,その結果? 対話の中で「事実でないもの」が多く会話に表れる
事実として起こったことを可視化し,第三者的な課題を可視化する
分からないことにははっきりと「わからない」「?」を書き出して事実確認が取れていないことが分かるように可視化を進める
事実関係のみを書いても繰り返し同じ感情を発言する場合には,関係図の外れに感情を大きく書き出すことで「自分の言いたいことがすでに書かれている」と
安心させてあげる
フォーカスポイントを作る
「解きたい問題はなにか」「その答えの範囲はどこからどこまでか」をはっきりさせる
「今やっている仕事のゴールがわからない」
「今やっている仕事」とは何か
「ゴール」とは例えばどういうものですか
「わからない」というのはどういう意味ですか
メンティは自分の中にあるモヤモヤした何かに順番に焦点を当て,曖昧な言葉からはっきりとした言葉に変えていくことで,自分が何を問題視していたのかがはっきりしていく
相手のペースを観察し,じっくりと答えるのを待つことが重要
メンターが自分のペースで質問をしてしまうと,メンティは何か責められているのではないかと感じて,防衛的に振る舞ってしまう
あるところまで問題をはっきりさせると,メンティは自然と問題解決にたどり着きます
メンティが気付けるように慎重にフォーカスポイントを作っていくことが大事
衝突から比較可能への変換
その問題がなぜ解けずに「悩んで」しまうのかの構造を明らかにして,解ける問題に変換する
以下のいずれかであるかを見極めて解決に導く
「選択肢」が不明確
「比較軸」が不明確
「評価方法」が不明確
そもそも解けない問題なので前提を変える「リフレーミング」をする
メンティが囚われている「認知フレーム」を別のフレームに変えていくことで「解けない問題」を「解ける問題」に変えていく
認知フレームを発見する示唆
(あくまで可能性の示唆であることは注意)
発言
こちら系
「この会社は], 「この人は」〜
周りから同じ側にいるように思われているが,自分は同じでないと感じているときに使われる,一体感を持っていない
あちら系
「あの部署は」, 「あの人は」
自分たちと大きく同じくくくりにいるはずなのに,自分達とは明確に違う目的で動いている.線引きの向こう側の存在として捉えている
極端系
「いつも」,「すべて」,「無駄」
ゼロかイチでグラデーションがない状態で物事を認知している
すべき系
「常識的に」,「〜すべき」
「〜すべき」という思考の枠組みがあって,その中に限定して考えようとしている
決めつけ系
「どうせ」,「〜に違いない」
感情的に決めつけて,事実を確認せずに推論している
言外の信号
特定の話題に言い淀んだり目線をそらしたりする
認知を限定するフレームは,不安・嫌な事があったときに,自分をコンフォートゾーンにおいて,それ以上踏み込んで考え
ないようにするための心の防衛装置が働いて現れる
前提を確認し,リフレーミングを促す
質問によって,メンティが前提としている思考の枠組みを徐々に可視化する
問題視している点を具体的に聞いていく
解決策についての束縛条件聞く
前提が「無いとしたら」を考えてもらう
前提の優先順位をつけてもらう
明らかな前提なのに,言葉にできないものは「すべき」認知フレームから生まれている可能性が高い(常識等)ので,その背後にある本質的な目的に目を向けさせる ー> 本質的な目的のためには今の前提は外して良いと気づけるかもしれない
情報の非対称性の解消
複雑でどうしようもないように思えた問題も,一歩踏み込んで「話し合えば」解決することが多いのは,ただお互いに知らないことがあるだけだから
自分の情報を相手に伝える
相手の情報を自分が聞く
「〜に違いない」という認知フレームによって情報の非対称性が解消されずに問題となる
課題を分離する
リフレーミングとは逆に,思考の範囲をクリアに限定してあげることで,本当の課題を抽出する
「あなたにとって具体的に何が問題か」
「あなたがコントロールできるものは何か」
「どうなればその具体的な問題は解消されたといえるのか」
他人の問題に関しては,「自分にして欲しいことはあるか」とまず聞く,代わりに解決しようとするのは早計になる事が多い
義憤のように吹き上がった感情が「他人の課題」を「自分の課題」であると認識し,膨れ上がっていくことで,小さく具体的な問題はしばしば大きな抽象的な問題になって組織全体に追って不合理をもたらすことがある
メンターも注意, 「メンティーを自立的な問題解決」に導くことが課題であって,「メンティの問題を解決すること」が課題ではない
2.3 心理的安全性の作り方
チームの生産性と最も強い関係性のある要因として 2012年のGoogle 労働改革プロジェクトの結果報告された
心理的安全性の定義
「対人リスクを取って問題ないという信念がチームで共有されている状態」
「自分のキャリアやステータス,セルフイメージにネガティブな影響を与える恐れのなく,自分を表現して働くことができること」
心理的安全性を高める事によるチームへの影響
「チームが機能するとはどういうことか」
エイミー・エドモンソン著
率直に話すようになる
課題について他の人がどう思うかをそれほど気にしないでも発言することができる
考えが明晰になる
不安が少ないため,認知の歪みが少なく,考えを明晰に表現できる
意義ある対立が後押しされる
関係性の悪化に伴った対立ではなく,より本質的な対立を健全に議論できる
失敗が緩和される
失敗を報告しやすくなり,ミスについて話し合う機会が増え,学習を行える
イノベーションが促される
今までの前提を取り払って,思考することができるようになり,創造的な意見がでる
組織内の障害でなく,目標に集中できるようになる
目標に対してストレートに向き合えている.組織内の理不尽を取り除くことに力をかけないでも済む状態にある
責任感が向上する
対人リスクをとっても,目標に対して自立的に行動できるようになる
心理的安全性が高い状態とは,「対人リスク」を伴う行動が増えている状態
単に「仲がよい」「心配がない」という表現では焦点がぼやけてしまう
はっきりと観測できるもので定義することで,目標とする方向に向かえているのか判別することができる
「問題点の指摘」,「自分の弱みの開示」「失敗の報告」といった「対人リスク」を伴う行動がとれるのは以下の2状態において,前者は生産的ではない
相手との関係がどうなってもいい
相手との関係性は決して崩れることはない
メンターとメンティーの間の心理的安全性を築くために
メンター自身の弱さ・自分の失敗を開示する
メンティの弱さ・メンティの失敗を開示してもらう
ストーリーテリング
自身の経験から迷いや不安に対してどう考え乗り越えてきたのか,「自分を大きく見せる」ことなく伝えることで,メンティー自身も乗り越えられると感じてもらう必要がある
自己開示
メンターの人間性のようなものが伝わるように,言うのもはばかられるような悩みと,それが解消されていくまでの過程を包み隠さず伝える
メンティ自身にも同じような問題を乗り越えられるのだという感覚を得てもらう
感情の共有
感情をを説明することで,自己開示の内容をメンティにより自分ごととして深く聞いてもらう
価値観の共有
物語全体を通して「伝えたい価値観」をはっきりさせておく
メンティは同じような価値観を持つことの重要性を理解し,現在の自身の問題に当てはめて考えるようになる
返報性の原理
「自己開示」をおこなったメンターに対して,メンティーはおそのお返しをしたいと感じるようになる -> メンティーの自己開示につながる
アクナレッジメント
どんなダメなところを見せても関係性が破綻することはないという確信を抱いてもらう必要がある
メンティ自身の存在を認めているというメッセージを常に発し続ける必要がある
3段階のアクナレッジメント
それぞれでアクナレッジメントを発信していく
行動承認
「結論から話すようになった」とうポジティブな行動をとったときに,褒めるでもなくその行動自体を声に出して伝える -> 行動自体が承認されていることを伝える
結果承認
「〜がよくて助かった」等,何らかの成果に対して,主観を込めて思いを伝える
存在承認
相手が今ここにいてくれてありがたいというメッセージ
挨拶や,会った時笑顔であること等
前に行ったことを覚ている等
私を主語にした I メッセージで伝える
「連絡がなかったから,(私は)心配したよ」
攻めるようなニュアンスは減り,存在を承認しているという明確なアクノレッジメントに変化させることができる
フィードバックを求める
頼られる体験は,強烈な自己承認と自己効力感を生み出す
メンティの強みや存在を認めて,フィードバックを求めることがメンティに対しての「アクナレッジメント」を構成する
明確にアクナレッジメントをするという意識を持って生活することが重要
「できなかった」と意識できれば,あとからフォローアップも可能
ジョハリの窓 (2軸からなる4象限で自分を捉える)
{自分はわかっている,わかっていない}
{他人はわかっていない,わかっている}
フィードバックを受けることで自分が知っている範囲を大きくする
自己開示をすることで,他人が知っている範囲を大きくする
フィードバック,自己開示(対人リスクを伴う行為)を通じて,自分も他人も知らない自分について理解を深めることが重要
メンターがその第一歩を受け持つ
2.4 内心ではなく行動に着目する
心理的安全性のある関係性の土台を作り,傾聴・可視化・リフレーミングを通じて問題の変換をした後に,「次の行動」を決めていく
内心は直接変えることも観測することもできないので「行動」に着目してフィードバックをし,変化を促す
例えば,「仕事に対する考え方が甘い」というのは適切ではない
メンティの内心はわからない
観測した行動を元に,内心を拡大推定してしまっていないか, そして観測できない変化を促していないか??
行動自体に対してフィードバックをして,変化を促すのが大事
手が止まっている時間があったが何を考えていたのか? -> どう考えを整理するのか,周囲に相談する方法等を伝えてあげる
SMART の原則を元に次の行動を合意する
解釈にブレがないか文章に書き起こして確認する
ブレがなければ,次のときに「その行動がとれたか」「とれなかったか」を振り返ることができる
メンターの考えと・メンティーの実際に取った行動に違いがあった場合,それをまた具体的なものに落として合意していく
メンタリングでは「次にどんな行動をするか」以外の観測不可能な合意を取ることはしない
Specific 具体的な
抽象的でない行動で,何をするのかに解釈のブレの少ない言葉である
Mesurable 測定可能な
その行動が行われたことを,どのようにして計測するのかを合意する
Achievable 到達可能な
達成可能な行動として合意する必要がある.メンティに十分コントロール可能である
Related 関連した
メンティの課題とどのようにこの行動が関連しているのか十分にメンティ自身が「説明できる」ような行動である必要がある
Time-Bound 時間制限のある
いつまでに行われるのか,いつまでに測定されるのかということが具体的に決まっている必要がある
「わかった?」は意味のない言葉なので使わない
「わかる」の定義を「具体的行動を行うことができる」に変換した上で理解を確認する
具体的な行動に変換できるか確認する
試しに一人でコレをやってみて
代わりに自分の言葉で説明してみて
わかったかわからないかはメティーの頭の中にしかなく,観測できない
メンターにとっての分かったとメンティーにとっての分かったには間違いなく違いがある
能力は習慣の積分,習慣は行動の積分
行動や習慣は外からでも,メンタリングの方法論を用いて成長を促すことができる
能力や成果自体には直接干渉できない
学習をし,仕事をこなすことができるようになって,学習するという行動が自己承認と自己効力感を生み出すことがわかってはじめて,より自発的に行動できるようになる
他人ができることは,次の小さな階段を見せて,それがちゃんと登れるのようにサポートし,階段を自力で上がるということが当たり前の習慣になるまでサポートし続けること
行動を「促進する力」と「阻害する力」を理解し,行動を継続的に取れるようにサポートする
「促進要因」はフィードバックを機会を増やし,適切に承認していくことで強化する
「阻害要因」についてはその環境や構造を変えるために行動を考え,その行動を促すことで対処
定期的なフィードバックの場においては,達成できなかったことに対して,その原因について深く話を聞いて共感していく.そしてどのようにその要因を取り除いていくのか建設的に議論する
メンタリングを行う時,メンティーは自分が今まで認識していなかった,あるいは無意識に避けていた様々な問題について「向き合っている」状態になる
一人では向き合うことができなかった問題にメンターの力を借りながらギリギリの状態で向き合うことを決意している
この状態で,メンターが突き放してしまうと,メンティは再び深くコンフォートゾーンに入り込んでしまい成長を促せなくなる
ゴールへのタイムマシンに乗る
メンティがコンフォートゾーンの中にいると,その中でしか思考は働かないので,低くて抽象度の高い目標を設定しがち
「もっと仕事ができるようになりたい」
「一人前の技術者になりたい」
メンターは,メンティに対して今の自分では達成できそうにないような高いゴールを引き出していく.
本当はどうありたいか,本当に人生で成し遂げたいことはなんだろうかというように問いかけていく中で,その人が本当になりたいものを共に見つけていく
一度高い目標を掲げていると,今まで見えていなかったことが見えてくる
ゴール設定によって「認知フレーム」が変化し,それに伴って行動も変化する
高いゴールに対して,「ゴール認識」のレベルが伴っていないと行動変化に至らない
レベル1 義務
達成しなければならないと誰かから押し付けられたゴール認識
達成できない理由探しを始めてしまう
レベル2 欲求
達成したいと自分で構築できたゴール認識
認知フレームが変わってくる
レベル3 意志
達成しようと決意を持って構築できたゴール認識
行動変化が訪れる
レベル4 必然
達成しているという確信を持って行動できているゴール認識
継続的な行動,つまり習慣が変化し始める
「未来に行って見てきたような確信」を持っている
自分の今の状態を未来から見てメンタリングすることができる
セルフマスタリーを得た
:将来の自分が今現在の自分をメンタリングしている状態
メンタリングはメンティがセルフマスタリーを得ることによって完成する
自分自身で設定したゴールに向かって率先して学習していく状態