サービスデザイン

武山 サービスデザインと
視覚化の技法

サービスデザインの目的

既存サービスの評価分析

新規サービスの草案

様々なステークホルダとのコミュニケーションや合意形成を促進

サービスデザインの特徴

サービス提供者の視座と、その利用者や顧客の視座の両面からサービスのプロセスと体験を理解し、創造する分野であること

それらの視座の違いに応じて記述手法を使い分ける慣習を持っていること

手法選択の基準
[Segelstrom 2009]

視覚化情報の共有相手

取得されるデータ形態

チームメンバ内

複雑な視覚表現

粗野なままの状態
ex. ポストイットを張り付けたシート

チームメンバ外

単純

美観的

利用目的

ビデオ映像を記録

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サービス改善

新規サービス創造

利用状況のコンテキストを理解し、デザインのオポチュニティを見つける為に、サービスブループリントを利用

フューチャーシナリオなど

視覚化の目的
[Seglstorm 2009]

インサイトの抽出

インサイトの伝達

共感の維持

サービスイノベーションのための戦略
[Michel et al. 2008]

知識や技能の製品への組み込み

資源統合の役割の変更

価値ネットワークの再編成

サービスデザイン領域の課題

顧客価値を分析し、それをイノベーションへと戦略的につなげていくフレームワークやツール、マインドセットの不足

カスタマージャーニーマップ
[Risdon 2011, Risdon and Wilkens 2012]

効果発揮の前提条件

ユーザリサーチの結果から導かれた内容がすべて簡潔に1枚のマップに収められていて、特別な説明や正当化を必要とせずに、デザインチームやクライアント企業の組織内に回覧させることができる

そのマップに次のデザインアクションを
引き起こす情報を記入されている

タッチポイント・インベントリー(目録)

武山 2015 サービスドミナント・ロジックとサービスデザインの実践

S-Dロジックにおけるサービス理解の意義

経済や社会を,モノや生産物の交換絵はなく,様々なアクター間のサービス交換を基盤として認識していくことを促し,さらにそのようなサービス交換の仕組みの変化によってイノベーションを起こす,ダイナミックかつ戦略的なパースペクティブがもたらされること

価値文脈への介入

ユーザの文脈価値の理解

サービスデザインではユーザリサーチをはじめとする各種のリサーチに基づいて,イノベーションの機会を探し出す

サービスデザインでは,行動観察やインタビュー調査を通じてこれらの特性を把握

ジャーニーマップやエクスペリエンスマップなどの視覚表現を用いて,記述

①最も重要なのは,対象ユーザの目的や
アウトカムの理解である

ユーザ自身も製品やサービス利用の最終的な目的や欲求を明確に意識できていない場合や,意識をしていてもうまく言語化できていない場合がある

文脈調査法:
コンテクチュアル・インクワイアリー法

課題:提供者側の立場にある人が提供物自体の特性や機能そのものをユーザのアウトカムや価値と捉えてしまいがち

既存サービスを如何なるアウトカム達成のリソースとして位置付けるかによって,それらの提供物に求められる性質や,他のリソースとの関連性が大きく変わる

提供物をいかなるユーザアウトカムと結び付けて発想するかは極めて重要なデザイン行為となる

S-Dロジックの観点:活動主体が各種のリソースを組み合わせて達成しようとする動機やアウトカム,その達成のために必要となる各種の外的リソース,さらにその主体に内在する知識やスキル等のリソースが,その主体の一連の行為のシークエンスを通じて結び付けられる状況を把握すること

ユーザリサーチ:デザインのテーマに関連して実施し,ユーザの求める価値の特性を文脈的に理解することが課題

②アウトカム実現のリソース分析

リソース統合マップ

Step1: アウトカムを達成するための行為のステップごとに必要なリソースを確認し,記述

リソース記述において重要なのは,あくまでアウトカム達成やほかのリソースとの関連性における対象リソースの機能や役割を把握すること

ユーザが使用する具体的な製品やアプリケーション,また接触する特定の人物や店舗などの名称ではない

Step2: 目に見えない内的リソースを外的リソースと共に抽出し,それらの結びつきが一覧できるようにマップが描かれる

更なる価値向上のために,どのような新たな関与の可能性があるかの検討を促す

価値文脈への介入アプローチ

①対象ユーザの現状のアウトカム・価値文脈を前提

②対象ユーザの現状よりも論理的に上位のアウトカムを再設定
既存の価値文脈を前提

③新規のアウトカムを想定
新たな価値文脈を想定

不足リソースを補う

ユーザをリソース統合タスクから解放

ユーザに新規のタスクを付加

リソースやリソース統合の文脈に既存製品・サービスの役割を位置づけ直す

デザインドリブンイノベーション: 既存の製品・サービスの可能性を引き出す[R.Verganti 2009]

サービス再構成

リソース結合と密集度の追及

S-Dロジック:サービスのイノベーションとは,既存のユーザのリソース統合の時空間的な編成から,新たな時空間的編成への再編(reconfiguration)

リソースの密集度:ある場所やタイミングにおいて,ユーザが必要とするリソースにどの程度適切な組み合わせでアクセスできるかを示す尺度[R.Norman 2001]

イノベーションは常に密集度の向上を目指したリソース統合の
時空間的な再編を伴って起こるもの

密集度を飛躍的に向上させるうえで情報技術が極めて大きな役割を果たす

イノベーションは,ある活動に必要なリソースの分離(unbundling)と再結合(rebundling)を通じて,より高い水準の密集度をユーザにもたらす

リソース統合再編へのイノベーション戦略

①リソースそのものに視点を置いて,リソースの分離や再結合をしやすくする可能性を検討

②ユーザや,ユーザをサポートするスタ府やシステムの行為の時間的なシークエンス,タイミングに注目し,それを変更することでどのような効果や便益がもたらされるかを検討

③リソースの獲得,統合の場所に焦点を当てて,それを空間的に変更する可能性について検討

④リソースへのアクセス方法を対象として,リソースの活用において,ユーザにリソースを所有させる形態から,リースなどの方法によってリソースへのアクセスを提供する形態に変更する可能性を検討

TEM

必須通過点

制度的

慣習的

結果的

両極化された等至点

両極化された等至点への経路を考える
ことで分岐のパターンを洞察できる

分岐点

分岐は意識的でない場合が多い

強化・維持・消滅

等至点

「○○に至る径路」を考えることで対象とした
経験を明確にする(HSI)

社会的方向付けSD

社会的助勢SG

サービスデザイナは,常にユーザにとっての使用価値や使用文脈からアウトカムを認識するよう,デザイン活動のあらゆる参加者に促す必要がある

「もしも○○だったら」と記述結果に対して問いかけるなどして,分岐点の緊張関係をあぶりだす試み