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『壁の涙 法務省「外国人収容所」の実態』 「壁の涙」製作実行委員会編 現代企画室 2007年3月31日 (日本の外国人政策と入管収容施設 高橋徹…
『壁の涙 法務省「外国人収容所」の実態』
「壁の涙」製作実行委員会編
現代企画室 2007年3月31日
「大きな自転車を買うから」赤瀬智彦
法務省はなぜ、彼・彼女らを難民として認めないのか。それは、母国政府が迫害の事実を否認しているうえ、当人の証言以外にその難民性を裏付ける証拠がないからである。だが、迫害当事者が「自分がやった」と日本の法務省に伝えるはずはなく、また被害者である難民自身が証拠をそろえて国外へ逃れることは極めて困難である。したがって、難民に対し無理な要求を強いている法務省の判断基準そのものが、まずは問われるべきだろう。 p.13-14
歴史を振り返れば、あるいは世界を見渡せば理解されるように、人間は状況に応じて、どんな残虐さでも発揮しうるものだ。だからこそ、人間が持つ暴力性を顕在化させないための制度を作ること、逆に言えば、人間のそうした性質を利用する仕組みに目を向け、より暴力的でない方向にそれを変容させてゆくことこそが重要なのではないか。 p.15
檻のない檻
収容体験者の証言から知りえたその実情
斎藤紳二
東日本入国管理センター
牛久
収容限度
700人
2005年暮れ
460人
満員ではないが、被収容者は狭い空間に押し込められている。
被収容者
日本のビザを持っていない人
ビザの期限が切れてしまった人
オーバーステイ
牛久の収容所には、一度品川の収容所に入れられた後、
移送されてきた人が多い。
「折り紙細工の材料は手に入るらしく、複数の被収容者から白鳥や花の細工物をプレゼントされたことがある。」 p.24
折り紙を被収容者から面会者に渡せたり渡せなかったり、なんなんだ?
「長期間遠くの景色を見ずにいると、目の神経がおかしくなるらしい。目が疲れやすくなった、新聞をちょっと読んだだけで涙が出てきて読み続けることができない、目をつむると沁みるように痛む、などと訴える人が多いのは、このせいではないかと思う」
遠くを見るのって大事なんだ。そうか。風景写真のポストカードを同封したらどうなんだろう?喜んでもらえるか、かえって傷つけてしまうのか。
警備官は無抵抗を貫いている
この警備官って、入管職員のこと?今は暴力や暴言が横行してるっぽいけど。最悪。
「渡された薬が効かないという話を頻繁に耳にする。しばらく服用して薬効がないと告げると、より強い薬が与えられるという。
このことに、被収容者は恐怖感を感じている。病気に適さない薬を与えられ、それがどんどん強くなるとすれば、副作用が心配になるからである。怖くなって服用をやめる人が少なくない。そして、病気治療に最も大切な医師との信頼関係が薄れていく」 p.31
強制送還の恐ろしい現実 p.39-40
では、強制送還はどのようになされるのだろうか。それはある朝、突然彼・彼女らを襲う。早朝、ドアが開いて30人ほどの警備官がどかどかと部屋に踏み込んでくる。関係のない人たちを制圧している間に、5~6人の警備官が目当ての被収容者を毛布ごとくるみ、部屋の外に運び出す。そして、別室に連れて行って強制送還することを宣告する。
まったくの不意打ちである。知人に連絡することも、弁護士に助けを求めることも許されないまま、手錠と腰縄の状態で車に乗せられ、成田まで運ばれる。
強制送還はいやだと歯向かう人もいる。2006年の2月に、強制送還を宣告された人が反抗しているうちに頭にけがをし、血が流れ落ちているのも構わず空港に連行し、飛行機に乗せようとした事件があった。ところが、こんな状態の人を乗せるわけにはいかないと機長が搭乗を拒否したため、しかたなく収容所に連れ帰った。法務省の管轄下にある機関が、国の行為として実行しようとした送還が、一機長の拒否で実現しなかったという情けない出来事であった。送還を拒む人に薬物を投与しているという噂もある。
送還された人が、帰国後、その国でどのような扱いを受けているかについては、収容所側は全く意に介さない。2004年に強制送還された複数の人たちが、その国の空港に到着したことは確か(警備官が同行するので、帰国したことは疑いようがない)だが、支援者たちが実家に連絡して調べたところ、その後の行方が全く分からないという出来事があった。拘束された可能性が高い。
そうした事態が起きてしまったことについて、どのように考えるかと収容所側に質問したところ、「われわれの任務は、速やかに全員を帰国させることであり、帰国後のことについてなんら責任を負わない」との説明だった。
日本の外国人政策と入管収容施設 高橋徹
1992年のバブル経済崩壊以降
外国人を危険な存在であるかのように印象付ける情報が、警察や入管から日常的に流され始め、それとともに、多くの外国人が摘発を受け、強制収容され、強制送還された。
このような外国人犯罪者増加キャンペーンには根拠となる犯罪統計が存在しない。
外国人差別ウォッチ・ネットワーク編『外国人包囲網』
現代人文社 2004年
なぜ日本政府は外国人を敵視する?政府機関が率先して、外国にルーツを持つ人へのヘイトスピーチを行ってきた。
2006年
「出入国管理及び難民認定法(入管法)」
「テロの未然防止」の名のもとに外国人管理を強める内容
①
入国審査時に、16歳未満、特別永住者、外交・公用の目的で来日したものを除く外国人からバイオメトリクス・データを採取する
指紋採取
写真撮影
②
テロリストの恐れがあると認定された外国人の退去強制を可能にする
③
希望者は指紋・顔写真情報を事前に登録することにより、
出入国審査がスムーズに通過できる自動化ゲートを設置する
外国人管理を目的とした法律
外国人の権利を定めた法律はない
現状
日本国憲法の人権に関する考え方を準用する
日本も加盟している条約にうたわれた国際人権基準
在日外国人の権利について定める「外国人人権基本法」が必要
ふたつ
入管法
在留資格制度
外国人受け入れのための制度
外国人の権利の観点から定められた制度ではない
在留中の外国人の活動に制限を加えるため
在留資格
日本がどのような外国人に在留を認めるか
外国人登録法(外登法)
入管収容施設
収容所
長期の収容を想定した
大村入国管理センター
長崎県大村市
東日本入国管理センター
牛久
収容場
各地方入管の管轄下にある比較的短期の収容を想定した
2007年時点
総収容定員1610人
各地方入管局・支局15か所
強制収容の問題
全件収用主義
収容に適するか適さないかの判断を行わないシステム
難民条約
日本は庇護を求めてきた人たちの入国・在留を認め、保護する責任を負っている。しかし、救済されるべきはずの難民申請者もいったん不許可が出て、不服として裁判で争っている場合には強制収容及び強制送還の対象になっている。
無期限・長期収容
被収容者
帰国費用が捻出できない
帰国先がない
帰国に同意していない
収容令書
30日間
延長しても最大60日間が上限
退去強制命令による収容には上限の定めがない。
無期限・長期収容を可能にしている法的根拠
強制送還の手続きに乗せられた被収容者
選択肢は二つ
送還に同意して帰国する
無期限・長期収容に甘んじる
日本の入管システムは、無期限・長期収容におくことによって、その人にどんな事情があろうが、送還に同意せざるを得ないような状況に追いやり、送還に強制力を持たせる仕組みをとっている。
未成年者の強制収容、収容による家族の分離
1999年ごろ
大阪で外国籍の未成年者が相次いで強制収容されるという事件が表面化し社会問題になった。
とよなか国際交流協会
子どもたちの強制収容は「子どもの権利条約」違反
未成年者の強制収容をやめるように入管に働きかけた
今は、高校卒業の19歳以降になると収容されるようになってるようだ。
東京クルドによると
入管職員による被収容者への虐待・暴行
強制送還の手続きや入国段階の審査手続きは、人権侵害の温床となっている
ひどすぎる。
「正当な制圧行為」
1999年
拷問等禁止条約に加盟した
国際基準
自由権規約
子どもの権利条約
人種差別撤廃条約
ミールさん暴行致死事件
入管職員8名
傷害致死容疑
同じ収容所にいた別のイラン人男性
「職員から暴行を受けて死亡した」
1997年8月9日 イラン 東京入国管理局 暴行致死の疑い
ムサビ・アバルベク・ミール・ホセインさん
97.8.9.東京入管第二庁舎
2003.10.18 シンポ「どうしたらなくせる日本の拷問」(入管問題調査会
高橋徹部分より引用)
人の自由を奪う施設はどんなものであれ、人権侵害が発生するおそれをはじめから内包しているという前提に立たなければならない。 p.60
「あってはならない」ことが、「いつでも起こりうる」という理解をしたうえでシステムを考えなければならない。
強制収容の目的は強制送還を確保するための身体拘束である。この目的を超えた権利制限を行わないようにする必要がある。 p.61
被収容者の人権を保障する責任は、
身体を拘束している国側にある。 p.62
少子化社会が迫る中で、外国人労働者の一部門戸開放の動きが一方にある。しかし、一方で減少したとはいえ、日本経済を底辺から支え続けた非正規滞在の外国人労働者、すなわち現在(2007年時点)20万人近くいる超過滞在者の問題を一体どうするのだろうか。最近の外国人管理強化の動きを見ると日本政府は、これらの人々を切り捨て、人権侵害を放置し、送還によって葬り去ろうとする方針を変えようとはしていない。葬り去られようとしているのは、わたしたちの隣人であり、仲間であり、場合によっては家族だったりする人たちである。 p.63
諸外国の中には、短期の時限立法によって、一定要件を満たす非正規滞在外国人を一斉に合法化するプログラム(アムネスティ)を実施している国もあるが、日本では、個別の審査による合法化(在留特別許可)しか行われていない。在留特別許可の判断基準は公開されていない。最終的な解決は送還により「隣人を目の前から消し去ること」ではない。アムネスティについて真剣に考えなければならない時期に来ている。 p.63
また在留を正規に認められて合法的に滞在する人たちも、日本国内での法的地位は極めて不安定な状態に置かれている。在日外国人の人権をきちんとふまえた法体系を整備し、教育やそのほかの行政機関のシステム、参政権などのシステムも整えていく必要に迫られている。 p.63