問題20(A)平成20年度類題出題甲株式会社(以下,「甲会社」という)とその取締役Aについて,以下の各問に答えなさい。
問題1Aが甲会社と取引をしようとする場合,どのような手続を経なければならないかを述べ,その手続を経ないでなされた取引の効力について述べよ。
問題2甲会社が取締役会設置会社であることを前提に,Aが甲会社と取引をした場合において,Aおよび他の取締役の甲会社に対する責任について述べよ。なお,甲会社は,監査等委員会設置会社でなく,指名委員会等設置会社でもない。
問題20(A)平成20年度類題出題甲株式会社(以下,「甲会社」という)とその取締役Aについて,以下の各問に答えなさい。
問題1Aが甲会社と取引をしようとする場合,どのような手続を経なければならないかを述べ,その手続を経ないでなされた取引の効力について述べよ。
問題2甲会社が取締役会設置会社であることを前提に,Aが甲会社と取引をした場合において,Aおよび他の取締役の甲会社に対する責任について述べよ。なお,甲会社は,監査等委員会設置会社でなく,指名委員会等設置会社でもない。
問題1
1.利益相反取引(直接取引)の手続とその趣旨
取締役が自己または第三者のために
会社と取引をしようとする場合(直接取引)
→重要な事実を開示し,株主総会
(取締役会設置会社では取締役会)
の承認を受けなければならない
∵地位を利用することにより,会社の利益を犠牲にし,自己または第三者の利益を図ることを防止
→会社の利益保護を図る
2.「自己または第三者のために」の意義
「自己または第三者のために」
→自己または第三者の名義において
∵間接取引についての規制がなされているため
3.結論と規制対象外の取引
Aが自己名義または第三者の代表者
または代理人として甲会社と取引をする場合
→重要な事実を開示し,株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の承認を受けなければならない
※取締役から会社へ無償で財産を贈与する場合や普通取引約款による定型的取引
→規制の対象外∵会社の利益が害されないため
4.手続を経ないでなされた取引の効力
必要な手続を経ないでなされた取引の効力
→無効∵
会社の利益を保護するため
※転得者といった第三者に対しては
その悪意を立証しなければ無効を主張することができない
→当該取引は無効
→Aに対しては無効を主張できる
→転得者といった第三者には無効を主張することができない
問題2
1.役員等の会社に対する損害賠償責任の総論
Aが甲会社と取引
→甲会社に損害が発生
→Aおよび他の取締役に任務懈怠があれば,
連帯して,甲会社に対して損害賠償責任を負う
2.Aの責任
利益相反取引によって甲会社に損害が発生
→Aの任務懈怠が推定される(423条3項1号)
Aが自己のために直接取引をした場合
→無過失責任とされている(428条1項)
∵利益相反取引は会社に損害を及ぼすおそれの大きい行為
→取締役に任務を怠らなかったことの立証責任を
転換することで会社の利益の保護を図っている
∵利益相反性が著しく高くなるため
3.他の取締役の責任
利益相反取引によって甲会社に損害が発生
取締役会非上程事項まで監視義務を負う
→利益相反取引をすることを決定した取締役等の
任務懈怠が推定される(423条3項2号3号)
∵取締役会の招集権や招集請求権が認められているため
→取締役会の決議なくても監視義務を怠ったならば,甲会社に対して損害賠償責任を負う