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28c会社の取締役に対する金銭の貸付と当該取締役への責任追及 (1,甲会社の取締役に対する任務懈怠責任の追求 (まず、甲会社は当然Aに対しては …
28c会社の取締役に対する金銭の貸付と当該取締役への責任追及
1,甲会社の取締役に対する任務懈怠責任の追求
まず、甲会社は当然Aに対しては
賃金の返還を請求できるが、
Aが返還しない場合は、
本件貸付時の取締役に対して、
任務懈怠責任(423条1項)を
追求することが考えられる
この場合、①取締役に過失による任務懈怠があること、
②会社が損害を被り、
③取締役の任務懈怠と損害の発生の間に相当因果関係があること、が必要である
本件貸付は
利益相反取引(自己のための直接取引)に
あたるから(356条1項2号)
取締役会の承認の有無にかかわらず、
本件貸付によって甲会社に損害が生じた場合は、
貸付を受けた取締役A、
貸付を決定した取締役、
承認決議に賛成した取締役は、
任務懈怠が推定される(423条3項)
本問では、承認決議の時点ではAは返済不能の状態にあった以上、Aや他の取締役がこの推定を覆すことはほぼ不可能といえる
また、任務懈怠責任は原則として過失責任であるが、自己のために直接取引は無過失責任である(428条1項)
本問では、他の取締役がAの返済不能の状態を知ることは可能であったと思われるから、
原則として他の取締役には過失があるといえ、また、Aは過失がなくても任務懈怠責任を負う
また、甲会社には借入金全額の損害が発生しており、
取締役の任務懈怠と損害の
発生の間には相当因果関係がある
よって、甲会社は、取締役に対して、任務懈怠責任を追及できる
2,甲会社の監査役に対する任務懈怠責任の追及
次に、監査役が適切な調査を怠り、
Aの返済不能の状態を見逃した場合は、
監査役には過失による任務懈怠があるといえる
よって、この場合は甲会社は監査役に対しても、任務懈怠責任を追及できる
3,株主の取締役・監査役に対する代表訴訟の提起
このように、Aは甲会社に対して貸金返還債務および任務懈怠責任を負い、
他の取締役や監査役は、甲会社に対して任務懈怠責任を負う
しかし、甲会社がこの責任追及をしない場合、甲会社の株主は、株主による代表訴訟を提起することが考えられる(847条)
まず、取締役の会社からの借入金の返還義務も、代表訴訟の対象となると解する
なぜなら、役員等の馴れ合いにより役員等の責任が不問に付される危険から会社・株主の利益を保護するという代表訴訟制度の趣旨からすれば、
役員等との関係ではその対象は広く解すべきだからである
また、すでに取締役を退任しているAに対しても、代表訴訟を提起できると解する
なぜなら、退任取締役の在任中に発生した責任については、他の取締役も監督義務違反の任務懈怠責任を問われる可能性が高く、
より一層不問に付される危険が高いからである
以上より、