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51A 防衛的募集株式の発行に対する既存株主の対抗手段 (効力発生後の対抗手段 (新株発行無効の訴え(著しく不公正な方法により新株が発行された場合は…
51A 防衛的募集株式の発行に対する既存株主の対抗手段
効力発生前の対抗手段
募集株式発行等差止請求権
(特定の株主の議決権比率の低下を目的とする募集株式の発行等は不公正発行か)
事例分析・論点の指摘
新株の発行は時価での発行
有利発行とはならないため、法令違反はない
しかし、株主Aの議決権比率を低下させる目的で発行を試みる
株主Aは当該新株の発行は「著しく不公正な方法」によるとして募集株式発行等差止請求権を行使して(210条2号)
自己の議決権比率の維持を図る
そこで、特定の株主の議決権比率の低下を目的とする募集株式の発行等が「著しく不公正な方法」にあたるかが問題となる
規範定立・自説の結論と理由
この点、公開会社において取締役会に募集株式の発行権限が認められているのは(201条1項,199条2項)
主として会社の機動的な
資金調達の便宜のため
募集株式の発行等の主要目的が、資金調達目的を超えて特定の株主の議決権比率の低下にある場合
「著しく不公正な方法」にあたると解する
あてはめ・結論
本問では、当該新株発行の主要目的は、Aの議決権比率の低下にあるから、「著しく不公正な方法」にあたる。また、Aは支配株主の地位を失う可能性があるから、不利益を受けるおそれがある。したがって、Aは募集株式発行等差止請求権を行使できる。
取締役の解任
このような新株発行を取締役会で決議した取締役には
善管注意義務・忠実義務(330条・民法644条,355条)違反がある
株主Aは株主総会の招集を請求し、もしくは自ら召集して(297条1項4項)
または取締役の解任を株主総会の議題とすることを提案して(303条)、取締役らを解任できる(339条1項)
効力発生後の対抗手段
新株発行無効の訴え(著しく不公正な方法により新株が発行された場合は無効原因になるか)
事例分析・論点の指摘
株主Aは新株発行無効の訴え(828条1項2号)を提起して自己の議決権比率の回復を図る
著しく不公正な方法による新株発行
前述した差止事由(210条2号)にとどまらず、新株発行無効の訴えの無効原因になるかが問題となる
規範定立・自説の結論と理由
新株の効力発生後は
取引の安全を重視すべき
新株発行の無効原因は
重大な瑕疵がある場合に限ると解する
当該新株発行が著しく不公正な方法だったという事情は会社の内部事情
かかる事情を理由に無効とすると、取引の安全を害する
また、株主は事前に差止請求権(210条)を行使できた以上、不利益をうけてもやむをえない
したがって、重大な法令違反ではなく、
それ自体は無効原因にはならないと解する
結論
よって、Aの新株発行無効の訴えは認められない
取締役の解任・解任の訴え
前述したように、取締役らには善管注意義務・忠実義務違反
Aは取締役らを解任できる
当該新株発行によってAが少数派に転じてしまい、取締役らの解任決議が否決された場合
Aは取締役解任の訴え(854条1項)を提起できる